【CBニュース掲載】処遇改善加算、対象拡大と一律支給見直しを- 園田修光参院議員インタビュー

プレス

CBニュースにインタビュー記事が掲載されました。

掲載先のリンクはこちら⇒ http://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=49580

記事の引用はこちらです。

かつて介護保険法の立法化に尽力し、その後は社会福祉法人の運営に携ってきた園田修光参院議員(自民党)は、この夏の参院選で16年ぶりに国政復帰を果たした。深刻化し続ける介護人材不足の解消こそが喫緊の課題とし、そのためには「介護職員処遇改善加算の対象を拡大するとともに、一律支給というやり方を見直し、働きに応じた支払いを実現すべき」と指摘する園田議員に話を聞いた。【聞き手・ただ正芳】

■「来年4月からの1万円アップ」目指す

―園田議員は、介護と子育ての安心を自らの政策として掲げ、いずれでも人材不足の解消のために処遇改善が不可欠と主張しています。特に介護については、どのような形で、どの程度の処遇改善が必要と思われますか。

 まず、今回の参院選で自民党が公約として掲げた「来年4月からの月額1万円の改善」をしっかり実現することです。私も、まずはその実現に向け努力するつもりです。その上で、介護については給付の枠組みの変更を訴えたい。

―枠組みの変更というと、具体的には何を念頭に置いているのですか。

 介護職員処遇改善加算の仕組みを念頭に置いています。
 この加算は介護従事者に対し、一律に支給されます。しかし、介護は介護従事者だけで成り立っているわけではありません。看護師もいれば栄養士もいますし、ケアマネジャーもいます。ところが、こうした人々は加算の対象になっていません。つまり、同じようにやるべき仕事をこなしているのに、加算の対象になっている人とそうでない人がいるのです。これでは現場がうまくいくはずがありません。

 まずは介護現場にいる多職種に対し、できる限り広く支給する制度にすべきです。同時に、誰にも同じ額の報酬を出すという仕組みを改める必要もあるでしょう。同じ加算でも、頑張った人や成果を挙げた人は、より多くの報酬を受け取れるという仕組みに変えるべきです。

■一律の支給上乗せは、逆にやる気をそぐ

―なるほど。その際の評価の基準については、どのようなものが考えられますか。

 当然、有識者も含めた専門会議で慎重に議論し、現場と経営者が納得できる基準を作るべきですが、仕組みとしては経営の現場に裁量を与えるべきと思います。もちろん、単に裁量を与えるだけでなく、適切な支給をしているかどうかをしっかりと監視する仕組みも不可欠ですよ。

 少なくとも現在の一律支給は改善しなければならないと強く感じています。介護の現場経営に携わった者としては、誰もが一律に同じ額を上乗せされるという仕組みは、逆にまじめに頑張る人のやる気をそぎ、経営を難しくしていると言わざるを得ません。

■介護と保育、資格統合は考えにくい

―国は効率よい人材確保の実現も見据え、介護や保育をはじめとした福祉系の資格について、統合も視野に検討を進めています。この点について考えをお聞かせください。

 福祉系の資格といっても、さまざまなものがあります。例えば准看護師と介護福祉士については、将来的には統合する方向で検討してもよいのではないでしょうか。一方で、介護と保育の統合は考えにくいですね。

―なぜでしょうか。

 介護をはじめとした高齢者福祉では医療との連携が不可欠ですが、教育的要素はそれほど求められません。一方、保育では医療との連携が求められる場面はあまりありませんが、教育的要素は不可欠です。この両者を統合するのは、やはり無理がある。介護職も保育職も独立したプロフェッショナルとして、認められるべきです。ただ、資格取得のための研修などについては、詳細に検討した上で、共有できるところはすべきでしょう。

■要介護度改善にはインセンティブを

―人材確保と同時に、介護業界で特に注目されているのは2018年度に予定される介護報酬と診療報酬の同時改定です。議員が、このタイミングに合わせて特に実現すべきと考えていることは何でしょうか。

 大まかにいえば、医療と介護の連携を強化した上で、「介護でできることは介護で」という方針を明確にし、住み慣れた地域で高齢者やその家族を支える「地域包括ケア」の概念を実現することですね。

 その実現のためにも、要介護状態になる人を増やさない取り組みや要介護度を重くしない工夫が不可欠です。つまり、健康寿命を延ばすための取り組みこそが大切ということです。18年度の介護報酬改定も、この発想で考えるべきです。

―具体的な制度改正の案はありますか。

 利用者の要介護度が改善したら、その施設や事業所には何らかのインセンティブが付く仕組みにすることですね。現行制度では、要介護度が重い利用者に対し、サービスを提供すると高い報酬が得られる仕組みになっています。要介護度が重ければ重いほど、同じサービスを提供するにしても手間と暇がかかることを勘案した制度ですが、この仕組みだけでは、要介護度を改善させる取り組みを促すのが難しいのです。

 そのほか、ITの導入やEPA(経済連携協定)によって来日した外国人介護福祉士らなど、新たな技術や枠組みの活用を促進するため、加算などを通じた政策誘導が必要と思います。また、IoTやAI技術などのイノベーションを促進させていくことにより、将来的には、より効率的で効果的な評価、制度全体のマネジメント体制を構築していけると思っています。

■無理がある社福と企業のイコールフッティング

―現場では社会福祉法人改革に対する関心も高まっています。既に改正社会福祉法は成立し、一定の方向性は示されてはいますが、それでも一部の関係者からは、社会福祉法人と一般企業の間でのイコールフッティングを求める声が根強く残っています。介護において社会福祉法人と一般企業の役割分担や連携はどうあるべきと考えますか。

 利益追求を第一義とする一般企業に対し、社会福祉法人の目的はあくまで「地域の福祉に貢献すること」。その前提がある以上、一般企業と社会福祉法人をイコールフッティングするのは少し無理があります。実際、一般企業が対応し難い福祉の分野に、社会福祉法人は積極的に手を差し伸べています。

 しかし、だからといって、社会福祉法人は利益を度外視して福祉にまい進すべきとも思いません。安定経営を実現し、地域の福祉に貢献するために必要な利益は当然必要だし、そうした意味での利益を上げるために、しっかりとした経営を行う必要もあるでしょう。

―最後に、団塊の世代が後期高齢者となる25年に向け、特に解決すべき課題についてご指摘ください。

 今のまま25年を迎えれば、東京などの都市部では施設などの「ハコ」はあっても、サービスを提供する人はいないという状況に陥るでしょう。その結果、看取られる場を確保できない市民が難民のようにあふれる状況になるかもしれません。それ以前に高齢者の急増に伴い、救急搬送の依頼が急増し、収拾がつかない状況となってしまうのではないでしょうか。一方で、高齢者も含め人口が激減する地方では、介護・医療のあらゆるサービスを受けるのが極めて難しくなっている可能性があります。

 つまり、都市部と地方で全く性質が異なる課題が待ち受けているわけです。この点をしっかり意識し、解決策を練らなければならないでしょう。

 先進各国で高齢化が進む中、世界は“高齢化先進国”である日本の今後の対応策に注目しています。財政という制約条件を意識しながらも、介護する側もされる側も幸せになれる社会と介護・医療体制を整えなければなりません。