月刊 老施協 2021年4月号

ニュース月刊老施協

施設・事業所が連携し運営の効率化を図ることも必要

対談相手:宮島俊彦 岡山大学客員教授 元厚生労働省老健局長

今回お招きした宮島俊彦さんは、厚生労働省保険局国民健康保険課長や大臣官房審議官、老健局長などを歴任され、在任中は地域包括ケアシステムの土台づくりにも取り組まれました。

そのだ:宮島さんが厚生労働省を退官されて以降、介護をめぐる状況は大きく変化しています。

宮島:特に介護人材の不足が深刻ですね。

そのだ:施設職員も足りませんが、新型コロナウィルス感染症が拡大するなか、在宅のホームヘルパー不足も危機的ですし、ケアマネジャーの不足も問題になっています。人手確保に加え、地方では高齢者の減少が始まり、利用者が減ることで事業運営が厳しくなっていくという問題も出てきています。

宮島:かつて各県でどんどん造られた50床の特別養護老人ホームの運営が厳しくなっているようです。対応策の一つとして考えられるのが、複数の施設・事業所で連携をすることです。請求事務や労務管理などを同じデータベースを用いてオンラインで処理できるようにすれば効率化が進み、その分、職員の処遇改善に回す原資も増やせます。

そのだ:国も介護現場でのテクノロジー活用について、いろいろな方策を検討しています。介護事業者には今後、科学的介護への対応が求められます。今回の介護報酬改定ににもLIFE(科学的介護情報システム)の活用が盛り込まれました。

宮島:フレイル(虚弱)予防には、「あ・し・た」つまり「あるく」(身体活動)、「しゃべる」(社会参加)、「たべる」(食生活・口腔機能)が重要だと言われています。LIFEはVISITのリハビリのデータとCHASEの口腔ケアと栄養状態のデータを統合し、これを利用してケアの質を向上させていこうというものです。介護現場には大きな力となると思いますが、ビッグデータになるまで長い目で見てじっくり取り組んでいく必要もあるでしょう。

そのだ:今後、高齢者施設では看取りへの対応も大きな課題となります。

宮島:鹿児島県のそのだ先生の施設では、看取りに積極的に取り組まれているそうですね。

そのだ:「看取りケア率100%」を達成して12年目を迎えます。素晴らしい在宅医がいてくれて、10人の看護師がサポートしてくれているからこそ、それが可能になっています。

宮島:人工呼吸器などの機械に囲まれながら最期を迎える病院に対し、高齢者施設での最期は人として自然というか、穏やかな印象があります。これからもより良い介護の実現に努めて頂ければと思います。

そのだ:今後ともご指導のほど、よろしくお願いします。

ればと考えています。

土生:個々の加算や基準のあり方を考えるには、制度を実際に使われている方々の意見を聴くことが大切です。今回の介護報酬改定も全国老施協をはじめ関係団体からご意見・ご要望をいただき、それらをもとに分科会で議論を重ねた内容が具体的施策として結実しました。科学的介護の推進など将来を見据えて施設・事業所でやるべきこともかなり盛り込まれましたが、ケアの質の向上、経営の安定化、人材確保などにつなげていただきたいと思います。

そのだ:今後とも介護現場が安定的にサービス提供を続けられるよう、ご協力のほどよろしくお願いします。