月刊 老施協 2020年7月号

ニュース月刊老施協

コロナ感染症を乗り越えて介護を一歩前進させよう

対談相手:石飛幸三 全国老施協理事・「芦花ホーム」医師

特養「芦花ホーム」の医師で、全国老施協理事の石飛幸三先生の提案をきっかけに、「広域感染症災害救援事業」が創設されることになりました。介護現場での新型コロナへの対応などについて、石飛先生とお話しする機会を得ました。

そのだ:高齢者施設の新型コロナウィルス感染症への対応についてお考えをうかがいたいと思います。

石飛:私は長く外科で仕事をしてきましたが、特別養護老人ホームに心を込めて高齢者を支えている人たちがいることを知り、本当に値打ちのある仕事をされていると思っていました。新型コロナ騒ぎが起きるなか、ジャーナリズムは「高齢者施設が危ない」と煽りました。もちろん油断するわけにはいきませんが、うろたえるべきではありません。どういうことが起きるのかをきちんと判断し、やるべきことをしっかり行えば、第2波、第3波が来ても対応できます。

そのだ:芦花ホームではどのような工夫をされましたか。

石飛:思うことを自由に語れる懇願会を計10回開き、すべての職員に出席してもらいました。本音を言える良い会になり、私としても改めて勉強になりました。

また、東大の先端科学技術研究センターから「1つの高齢者介護施設全体の環境調査を行いたい。

入所者や職員だけでなく、出入りする業者・配膳車・汚物も含めた検査を行いたい」という申入れがあり、協力しました。

そのだ:私も現在、厚生労働省と、感染拡大の兆候を知るために、施設から出る下水を検査してはどうかという話しをしているところです。

石飛:それは良い案ですね。

そのだ:日本の高齢者介護施設は現場の人たちの努力で死亡者数を抑えています。国としても現場を応援するため、感染者、濃厚接触者がいない介護・障害福祉事業所で働く職員にも5万円の慰労金をお支払いすることになりました。当初案では利用者と接する人だけが対象でしたが、私は「事務職などの関係者もみんな努力している。分け隔てしてはならない」と強く主張しました。

また、国としての課題の一つに、介護現場の統一マニュアルがまだできていないことがあります。ぜひ力をお貸しください。

石飛:東大からは「芦花ホームで感染症検査に関する倫理委員会をつくりましょう。その責任者になってほしい」とも提案されました。これを聞いて直観したのが、医療と介護が一緒にやっていくうえでの、大きな柱になりうるということでした。それぞれの使命を改めて考える良い機会になるはずです。

そのだ:今回のコロナ禍を、医療と介護のあり方の確立に向けて一歩前進する契機としたいです。

休校が行われましたが、介護職員のなかにはお子さんのいる方も多く、子どものために休まざるを得ないというケースもあります。

そのだ:今回、結城先生にはさまざまなご助言をいただきました。たとえば、「在宅サービスを中止にすると高齢者のみの世帯は大変困る」というご指摘を受け、デイサービスの職員に在宅に回ってもらい、給与も保証するといった扱いも可能にするようにしてもらいます。

石飛:いったんデイサービスを休止させれば、職員が他の職務に移り、感染症が落ち着いても人材が流出したままになる懸念もありますので、職員の定着ということを念頭に置きつつ対策を講じられるべきでしょう。また、デイサービスなど在宅は小さな事業所が多く、消毒剤やマスクを入手しづらい状況も起こっています。この点についても手を打っていただきました。

そのだ:首相官邸に「最優先でマスクを確保してほしい。小さな事業所にも行き渡る形にしてほしい」とお願いしたところ、すぐさま菅官房長官がメッセージを出し、官邸の対策会議で緊急対応策として高齢者福祉施設などに2000万枚のマスクをお届けする事が決まりました。

石飛:この数週間、介護現場でヒアリングをしましたが、新型コロナウィルス関連の国の通知が五月雨式に出されるので少しわかりにくい、という声も聞きました。わかりやすいように工夫することも必要なのではないでしょうか。

そのだ:その点も早速、対応を求めたいと思います。今後とも石飛先生にアドバイスをいただきながら、いろいろな対策にしっかり取り組んで参ります。

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