介護を守り、アップデートする参議院議員 そのだ修光 (自民党) です。
決算委で質問に立ちました。
質疑内容 |
1. 川崎無差別殺傷事件について |
2. 高額薬剤について |
3. 介護保険制度をめぐる状況の変化と政府の認識 |
4. 介護保険の被保険者年齢設定に関する理由 |
5. 被保険者年齢の引き下げの検討 |
6. 子育て支援に着目した連帯基金構想 |
7. 連帯基金構想による「連帯」の考え方 |
1.川崎無差別殺傷事件について
先日、川崎で、大変痛ましい無差別殺傷事件が起きました。犠牲となり、亡くなられたお二人のご冥福をお祈りします。残されたご家族のお悲しみはいかばかりか。負傷された方の一日も早いご回復をお祈りいたします。
犯人は、自殺してしまいました。なぜこのような事件を起こしたのか、理由すら追及することができません。
時期を一として、先週、自殺対策調査研究推進法案を我々議員立法で成立させました。このような道連れ自殺への研究も必要だと思います。
また、犯人は引きこもりだったという情報も出ており、社会から孤立していた様相もうかがえます。 人を孤立させない、自殺に追い込まない対策が必要であると考えますが、厚生労働大臣のお考えをお聞かせください。
2.高額薬剤について
白血病などの血液がん治療に効果が期待されている新薬「キムリア」が先月22日から保険適用されました。投与は1度のみで、従来の治療薬に効果が得られなかった患者への効果が期待されています。ただし、1回当たりの薬の価格としては最高額の3349万円と大変高額です。
私自身は、薬剤費の伸びの原因は、多剤処方・残薬問題など様々なところにあり、一概に高額薬剤が薬剤の伸びに影響するわけではないと思っています。他方で、高額薬剤の保険適用について、保険財政への圧迫を懸念する声も上がっています。
高額薬剤の保険適用に対する考え方について、ご見解をお伺いさせてください。
3.介護保険制度をめぐる状況の変化と政府の認識
次に、介護保険制度についての質問に移ります。
平成12年に介護保険制度が開始されてから20年近くが経過しました。
かつて、衆議院議員として自民党社会部会で制度の創設にかかわった経験を振り返りますと、当時の議論では、介護保険は地方の雇用・経済対策という考え方もありました。しかし、現在、介護現場は全国あまねく大変な人材不足に悩まされています。介護報酬改定のたびに、マイナス改定の圧力がかけられ、介護現場は戦々恐々とせざるを得ない状況です。改定をめぐる議論の中で「マイナス改定」という言葉が流れれば、更に人材離れも進みます。
保険財政を緊縮にすれば、介護現場から人がいなくなります。人がいなくなれば、必要なサービスは提供されません。保険料を払ってサービス受けられず。これでは持続可能な保険制度であるとは言えないと思います。介護保険を将来にわたって持続可能なものとするためには、長期的な視点を持った改革を行っていかなければならないのではないか、と思います。
本日は、持続可能な保険制度に向けて前向きな検討ができればと思います。
平成12年から介護保険制度の規模も大きく拡大しました。
事業の総費用額は平成12年度の3.6兆円から平成30年度には約11兆円と、実に3倍以上の規模となりました。そして今後、団塊の世代が75歳を超えるようになれば、介護保険のニーズはさらに高まると予想されます。
政府は、社会保障の将来推計において、年金、医療、介護の各社会保険の保険料の見通しを公表しています。このうち65歳以上の方々の介護保険料については、2025年には月額7,000円台前半、2040年には9,000円台前半にまで上昇すると見込まれています。
まずそこでまず、政府に確認させてください。高齢化率、平均寿命、人口など、高齢者に関する主な指標に関し、介護保険制度創設時の数字と当時の段階での将来見通しの説明をお願いします。その上で、それに比べて現在の状況がどのように違っているか、そして現在の状況を政府としてどのように認識しているか、教えてください。
4.介護保険の被保険者年齢設定に関する理由
制度の持続可能性を考えるに当たって一つの方策となり得るのが、被保険者範囲の見直し、つまり具体的には被保険者の年齢を引き下げることではないかと考えています。
介護保険制度を創設する際には、被保険者の年齢についてさまざまな案が検討されましたが、結果的に40歳以上の方々を被保険者とする制度に落ち着いた記憶があります。
そこで伺います。制度設立時、どのような理由で40歳以上とされたのか、その理由を確認させてください。そして、介護保険の被保険者の年齢設定にかかわる状況について、制度創設当時に比べて現在どのように変化してきているか、ご説明ください。
5.被保険者年齢の引き下げの検討
介護保険の被保険者の範囲については、制度が始まった後も、これまでたびたび議論されてきていると承知しております。 介護保険の被保険者年齢の引き下げについて、これまでの議論を踏まえて政府としてどのような課題があると認識しているのか。また、次期介護保険制度見直しに向けて、被保険者範囲の見直しを検討することについてどのように考えているか、教えてください。
6.子育て支援に着目した連帯基金構想
有難うございます。介護保険の持続可能性を考える時、持っておくべき視点には二つの面があると思われます。
一つは、介護保険制度の中だけで考えていても限界があるということです。被保険者年齢の引き下げに関しても、単に年齢を引き下げて介護保険料を負担してもらうだけでは、若者世代の理解を得ることは難しいと思われます。このため、自分自身が受けるであろう介護給付だけでなく、家族を含めて受けることができるメリットや社会全体にもたらされる効果など、保険料の負担と給付の関係を説得的(せっとくてき)に示して、その負担が負担に値するという考え方が広がっていかなければなりません。
もう一つは、社会保障制度を持続可能なものにするには、少子化対策を進めていく必要があるということです。現在、合計特殊出生率はやや上向きに転じたとはいえ、年間の出生数は100万人を割っています。これは、団塊の世代や第二次ベビーブーム世代の半分に満たない数であり、厳しい状況に変わりはありません。政府としても近年、消費税財源の使途に少子化対策を加えて社会保障4分野として「全世代型社会保障」を推進し、「子ども・子育て支援新制度」の実施や幼児教育・保育の無償化などの具体的な施策を講じているところではありますが、今後、少子化に少しでも歯止めをかけるために、社会全体で子どもや子育て世代を支えていくことの重要性を共有し、そのための仕組みを整えていく必要があるのではないでしょうか。
この二つの面を考えた場合、参考になると思われるのが、慶應大学の権丈教授が提唱している「子育て支援連帯基金」構想です。この構想を簡単に紹介すると、年金、医療保険、介護保険の3つの公的社会保険制度が連帯して、新たに設ける「子育て支援連帯基金」に拠出するというものです。この基金を活用して子ども・子育て支援を進めることで少子化対策が実を結べば、それぞれの制度において持続可能性を確保するとともに、将来の給付水準の高まりにつなげることが期待できます。 そこで伺います。年金や医療保険、介護保険制度をそれぞれの中だけで考えるのではなく、この構想のように、将来の社会保障の支え手である子どもに着目した上で公的社会保険制度全体の持続可能性を高めようとする案も一考に値すると考えます。政府としては、少子化を克服するために、今後、財源確保も含めてどのように子育て支援施策を進めていく考えか、お聞きします。
7.連帯基金構想による「連帯」の考え方
「子育て支援連帯基金」構想で注目すべきもう一つの点は、社会の「連帯」という考え方が背景にあるところです。
元厚生労働省社会・援護局長の山崎史郎氏も著書の中で、この構想がもつ「制度間連帯」による支え合いという考え方に注目していると表明しています。そして、こうした新たな形態の支え合いによって、社会保障が目指す「社会連帯」が強化されていくものと考えられます。
もちろん、現行の公的社会保険制度はそれぞれ独自の歴史を持って複雑に発展してきたものであり、さまざまな利害が絡み合って制度の大幅(おおはば)な変更には大きなエネルギーが必要であることは承知しています。しかし、平成28年に「子ども・子育て支援新制度」の事業主拠出金の率を引き上げた際、同時に雇用保険の料率を同じ率だけ引き下げるという対応をとったこともあります。この時、政府の公式見解は両制度が直接リンクしたものではないというものでしたが、実態としては制度を超えて連帯した例と言えるのではないでしょうか。
最後に、伺います。この「子育て支援連帯基金」構想のように、それぞれの社会保険制度に横串を刺した上で全体の持続可能性を高める考え方について、政府としてどのように認識しているでしょうか。
質問を終わります。