介護の質を上げ、介護職のプロフェッショナリズムを確立するために

近況報告

私は、介護の質を高められる仕組みにしたいと思っています。

問題意識の始まりは、要介護度が重くなると介護保険料が増える、という仕組み。一生懸命、良い介護をすれば、要介護度の進行を遅くしたり、場合によっては要介護度が改善することもあります。しかし、要介護度が軽くなると介護保険料は減ってしまいます。私の運営していた施設でも、要介護度5から2に下がったご利用者さんがおりました。お一人ではなく、何人もそのような事例が出ており、職員一同喜びとともに、収入が減るという複雑な葛藤を抱えていました。介護の質を上げることに逆行するインセンティブが働いている仕組みになっているのです。これは現場の運営者にとっても、介護職員にとっても、大きなモチベーションダウンにつながります。

先々週金曜日、臨床データの収集、フィードバックシステムを構築することにより、医療や介護の質を上げていく研究をしている慶應大学医学部医療政策•管理学の宮田裕章教授と意見交換の会をさせていただきました。

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宮田先生は外科系を皮切りに臨床データシステム(NCD: National Clinical Database)を構築・運用されています。現在では一般外科医が行っている手術の98%以上の症例が登録されています。このデータシステムを利用すると診療成績や在院日数の比較などができるようになり、また、広島県では、がんの診療に関し、最も効率的な機能編成ができるようになったそうです。広島のガンの5年生存率は格段に高くなったと聞きました。

このようなシステムが構築されると、専門医申請のための症例実績を証明するインフラとして活用されるだけでなく、手術成績からみた医療評価も可能であり、各施設の成績と全国平均との比較も可能であり、個々の施設での医療の改善に役立つ情報の提供が可能となるのです。

最近は、介護の方面も考え始めているとのこと。
介護は、医療と決定的に異なることとして、「治療」ではないこと、そして長期化することが上げられます。そのため、どう評価するのが非常に難しいところに問題があります。

しかし、AIやカメラ技術などの新しい技術を使えば、日常生活動作から身体状況が把握でき、ゲームを通じて認知症の進行度もアセスメントできるくらいまでに発展してきているようです。こちらが実用化すれば、より客観的で正確な要介護度が測定できるようになるでしょう。そうすると、利用者の要介護度の推移が見える化されるので、各施設の成績と全国平均との比較も可能になり、個々の施設での介護の改善に役立つ情報を得られるようになります。

見える化が進めば、利用者も施設を選びやすくなります。利用者の要介護度の進行が平均よりも遅ければ、加算がつく、というようにすれば、選ばれる施設となるために、また加算のつく施設となるように、質の改善により一層の努力をするようになると思います。また、客観的な評価ができるようになるので、介護職のプロフェッショナリズムも確立しやすくなると思っています。

中長期的な視野を見据え、改革を進めていきたいと思います。